2024.9.30
コラム
当協会は、日本のエンジェル投資環境を整え、スタートアップの成長を後押しする活動をしています。月に1度のペースで、活動報告、最新ニュース、ピッチイベントのレポートなど、エンジェル投資に関わる様々な情報を発信していきます。
世界的にも若い世代の起業が増え、若手起業家が日本の未来を切り開く原動力として期待されています。特に、学生によるビジネス創造には、柔軟な発想と革新力が満ちています。こうした学生起業家たちを支援するため、経験豊かな経営者や投資家が積極的にサポートを提供し、新たな可能性を引き出しています。
本記事では、次世代のリーダーとしての学生起業家の潜在力と、その成長を支える支援の重要性に迫ります。
近年、日本国内でも学生起業家への注目が集まっています。日本政策金融公庫が行った「起業意識に関する調査」によると、2023年には大学生や大学院生の約5%が起業に強い関心を示しており、これは前年に比べ約1.5倍に増加しています。この傾向は、日本社会が変化を求めている中で、若者がリーダーシップを発揮しようとしていることの表れと言えるでしょう。
また、20代の起業家の約40%が、IT・テクノロジー業界で新たなサービスや製品の開発に取り組んでいるそうです。
*出典: 経済産業省「若年層の起業意識と起業支援に関する調査」
デジタルネイティブ世代である彼らは、テクノロジーの活用が生活の一部になっているため、SNSマーケティングやクラウドベースの業務管理、データ分析といった新しい手法を、スムーズにビジネスに取り入れることができます。たとえば、SNS上でリアルタイムの顧客ニーズを収集し、これに応じたサービスの即時改善を図るなど、従来の企業が真似できないスピードで変革を起こせる点が大きな魅力です。当協会でも、学生起業家の持つこうした柔軟な思考や旺盛な好奇心、独自の発想力に非常に大きな可能性を感じており、彼らがビジネス界の新しい担い手として成長することを期待しています。
また、社会人になる前に起業することは、失敗を恐れないチャレンジ精神が培われるため、将来のリーダーとしての基盤を形成するのに役立ちます。失敗を良しとしない日本人が多い中、失敗を成長の糧とする考え方が広がることで、日本全体の経済や社会の柔軟性が向上し、革新的なイノベーションを生み出す基盤が整備されていくでしょう。
こうした点からも、学生起業家が増えることは日本社会において非常に意義深いものだといえます。
当協会では「ポテンシャル投資」とは、ビジネスの初期段階からその将来性に期待して資金や支援を提供する投資方法と定義しています。エンジェル投資家がポテンシャル投資をすることは、自らのアイデアが評価され、経営面のサポートをしてもらえるため、その後の起業家人生においてかけがえのないものとなるでしょう。
また、学生起業家への投資はリスクが高いことは確かですが、その成長過程にこそ支援の価値があり、将来的に大きなリターンをもたらす可能性も秘めています。
アメリカのデータによると、ポテンシャル投資を受けた若手起業家の30%以上が5年後も事業を継続しており、うち15%が年間1億円以上の売上を達成しているとのことです。このことから、スタートアップの成長過程においてエンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの支援が重要な役割を果たしていることがわかります。
自己資金が不足している段階の学生起業家にとって、投資は大きな励みとなり、挑戦を後押しします。2021年の調査によると、日本国内のスタートアップの半数以上が資金調達に苦労している現状があるため、ポテンシャル投資の存在は今後益々重要になっていくでしょう。
*出典: National Venture Capital Association「NVCA 2022 Yearbook」
*出典: 日本政策金融公庫「起業実態調査」
学生起業家が成功を収めるためには、資金提供だけでは十分ではありません。実務的なアドバイスや経営サポートが不可欠であり、その役割を担うのが経験豊富な中小企業経営者です。経済産業省の「新規事業の成長と支援に関する報告書」では、日本のスタートアップ企業の70%以上が、資金面のみならず経営サポートや人脈形成が重要だと回答しています。
中小企業経営者は、起業時の困難を克服してきた実務経験が豊富であり、現場で培った実践的なアドバイスを提供することができます。たとえば、予算の組み方、キャッシュフローの管理、リーダーシップの取り方など、実践的なノウハウが学生起業家にとって大きな助けとなります。
また、経営者が持つビジネスネットワークを活用することで、学生起業家が信頼できるビジネスパートナーや顧客を見つける機会も増えます。
さらに、海外の調査では、メンターを持つ起業家は持たない起業家に比べ、事業の継続率が倍近く高いというデータもあります。事業の立上げを経験し、結果を残している経営者の知見を活かしたメンタリングが学生起業家の成功に重要な要素であることがわかります。
学生起業家に対して、資金提供だけでなくビジネス戦略やマーケティングを含めた「伴走型の支援」を行い、彼らの成長を長期的な視点で見守ることは国の発展においても不可欠なのです。
*出典: Kauffman Foundation 「Mentorship in Entrepreneurship」
上記で説明したとおり、エンジェル投資家は単なる資金提供者ではなく、起業家の成長をサポートする「伴走者」としての使命を持っています。
2022年の調査によると、エンジェル投資家から支援を受けたスタートアップの約60%が3年以内に黒字化しており、エンジェル投資が事業成長に果たす影響は非常に大きいことが示されています。特に、学生起業家が事業を継続するためには、知見と経験から裏付けられた具体的なアドバイスが欠かせません。
私たちエンジェル投資家協会では、勉強会や交流会を通じて学生起業家とエンジェル投資家が直接対話し、ビジネスプランを磨く場を提供しています。さらに、エンジェル投資家同士のネットワーキングも積極的に推進し、知識やリソースの共有を図ることで、学生起業家が安心して挑戦できる環境を整えています。学生起業家が自由にアイデアを試し、新たな挑戦を続けられるようにすることが、エンジェル投資家の使命であると考えています。
こうした支援活動を通じ、エンジェル投資家協会は、若き起業家が自信を持って未来を切り開くためのサポートを強化してまいります。学生起業家に対する支援が、日本のイノベーション促進の鍵を握っていると考え、私たちも引き続きその成長に伴走していきます。
*出典: Japan Venture Capital Association「2022年ベンチャーキャピタル市場調査」
学生起業家へのエンジェル投資でIPOまで到達するのは、難易度が高い「上級者向けのエンジェル投資」であるのは事実です。
しかし、それ以上に「支援が重要であるステージ」でもあることから、エンジェル投資家として最もやりがいがあり、IPOした時には最も投資リターンが大きいのです。
また、全国各地に優秀な大学が点在しており、起業したい優秀な学生がいるのですが、スタートアップをつくるにあたって、人・モノ・金・情報が圧倒的に東京に集中しているため、地方の優秀な学生起業家が不利な状況になっています。
日本エンジェル投資家協会では、そういった不均衡の解消を目指し、全国各地の学生起業家へ東京と同様の環境を整備するべく、まずは関西地域から着手してまいります。
一般社団法人日本エンジェル投資家協会では、エンジェル投資家向けの「エンジェル会員」、スタートアップを支援している自治体や企業・団体向けの「パートナー会員」を募集しています。
会費は無料ですので、ぜひ一緒にスタートアップの成長を支える活動をしませんか?
詳しくはこちら → https://j-angel.jp/