JA

2024.10.31

コラム

名古屋のスタートアップ革命!STATION Aiで進化する地域イノベーション

当協会は、日本のエンジェル投資環境を整え、スタートアップの成長を後押しする活動をしています。月に1度のペースで、活動報告、最新ニュース、ピッチイベントのレポートなど、エンジェル投資に関わる様々な情報を発信していきます。

愛知県・名古屋市に開業した「STATION Ai」は、日本最大級のオープンイノベーション拠点として注目を集めています。製造業と自動車産業に強みを持つ名古屋は、これまでスタートアップエコシステムの発展が課題とされてきましたが、STATION Aiをきっかけに、地域の活性化とグローバルな挑戦が進む兆しを見せています。

本記事では、名古屋の地域特性や課題、STATION Aiの可能性、さらには海外事例との比較を通じて、地域スタートアップ支援の未来について考察します。

 

名古屋の新たな挑戦「STATION Ai」とは?

2024年10月31日、名古屋市鶴舞公園南側に開業した「STATION Ai」は、延床面積約2.3万㎡を誇る日本最大級のオープンイノベーション拠点です。
この施設は、スタートアップ企業 約500社、企業、ベンチャーキャピタル、研究機関、自治体など約200社が一堂に会し、新たな価値を創出する場として注目されています。
STATION Aiでは、オフィス スペースの提供に加え、国内外の投資家とのマッチングイベントや専門家によるメンタリングなど、包括的な支援プログラムが展開されています。これにより、地域の起業家たちが資金やネットワークを得やすくなると同時に、名古屋市が「スタートアップ企業支援補助金」に多額のお金を投じていることからも、自治体の本気度が伺えます。
また、施設には最新の研究設備も整い、特に自動車関連技術や環境技術分野でのイノベーションを後押しすることが期待されています。

さらに、施設設立の背景には、名古屋が従来抱えていた課題への対応もあります。名古屋の経済規模の割にスタートアップ活動が活発とは言い難く、特に外部からの資金や人材を呼び込む取り組みが十分ではありませんでした。しかし、STATION Aiを起点に、こうした課題がどのように解決されていくのか、地域の産業構造を変える可能性に大きな期待が寄せられています。

一般社団法人エンジェル投資家協会 STATION Ai

「名古屋」という地域性とスタートアップの課題

名古屋市が属する愛知県は、トヨタを中心とする製造業や自動車産業が発展し、全国製造品出荷額の約16%を占める産業都市です。この安定した産業基盤は地域経済の強みである一方、新興企業が成長する余地を狭めてきた側面もあります。
総務省統計局「労働力調査(基本集計)都道府県別結果」によると、2024年1月5日時点では、スタートアップ企業で働く従業員の合計は87万8,737人。東京都全体の就業者は837万9,000人に対し、スタートアップ企業の就業者は68万150人で、割合にして8.12%と突出して高かった。続く大阪、愛知に比べても東京への一極集中であることがわかります。
また、「閉鎖的な土地柄」とも言われる名古屋では、外部からの人材や資金が流入しにくいとの指摘もあります。

一方で、近年では自治体による支援策が活発化しています。愛知県が主導する「Aichi Open Innovation Accelerator」で、地域内外のスタートアップを支援する土台が整いつつあります。
特に、地元大学や研究機関との連携が進んでおり、名古屋大学が主導する研究成果の産業化プロジェクトが成果を挙げています。また、自治体は既存の製造業とスタートアップをつなげることで、地域の特性を活かしたイノベーションを促進しています。

スタートアップ企業の就業人数

スタートアップ企業の就業人数(STARTUP DB 調べ)

 

海外事例に学ぶ:シリコンバレーとSTATION Aiの違い

スタートアップエコシステムの成功例として、アメリカの「シリコンバレー」がしばしば挙げられます。
シリコンバレーは、スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校などの研究機関、大手IT企業、そしてリスクを恐れないエンジェル投資家たちが密接に連携することで、世界屈指のイノベーション拠点となりました。
2023年のデータによれば、シリコンバレーのスタートアップが調達した資金は年間約600億ドル(約8.4兆円)にも上りますが、昨年の1,210億ドルから大幅に減少しています。地域のスタートアップ数は約10万社に達しており、AI分野はシリコンバレーの独壇場です。
*出典:CB Insights「2023 Venture Capital Investment Report」

一方、STATION Aiは日本の地域特性に合った支援体制を模索しています。シリコンバレーのように自由で開放的な文化を取り入れると同時に、名古屋ならではの強みである製造業の技術や地域密着型の経済基盤を活用しています。また、日本ではシリコンバレーに比べてエンジェル投資家やベンチャーキャピタルの規模が小さいため、自治体や公的機関の積極的な支援が欠かせません。
この点で、STATION Aiが地域社会全体を巻き込む形でスタートアップ支援を行うモデルは、他国にはないユニークな取り組みといえるでしょう。

AI分野ではシリコンバレーが他の地域に圧勝

STATION Aiがもたらす可能性

STATION Aiの役割は、単にスタートアップ支援にとどまりません。 例えば、スタートアップを含む海外企業が数十社入居予定とされ、名古屋が国際的なイノベーションハブとなる可能性を秘めています。

また、地域の課題解決に特化したスタートアップが増えることで、製造業や自動車産業を中心とする既存の産業と相乗効果を生み出すことが期待されています。特に、カーボンニュートラルや自動運転技術といった分野では、地元のスタートアップと大企業のコラボレーションが進むことで、新たな産業基盤の構築も可能になるかもしれません。

さらに、資金調達面でも動きが活発化しています。2023年、愛知県内のスタートアップが調達した資金総額は約50億円に上り、前年に比べて20%以上増加しました。こうした資金がSTATION Aiを通じて効率的に活用されることで、名古屋におけるスタートアップエコシステムの成長が加速すると期待されています。
*出典:2023年愛知スタートアップ資金調達額ランキングTOP10

 

地域間連携で広がる未来

STATION Aiの成功事例は、名古屋にとどまらず、全国の地方都市にも影響を与えることになるでしょう。
例えば、福岡市の「Fukuoka Growth Next」や新潟市の「NINNO」など、地域独自の特性を活かした支援拠点が増加しています。 これらの事例は、地域の地場産業とスタートアップを結びつける好例であり、地域間の連携が進むことで、日本全体のスタートアップエコシステムの強化につながります。

また、総務省が推進する地方創生施策においても、「地方発イノベーション」が重要なテーマとなっており、STATION Aiの取り組みはこの方針に沿ったモデルケースとなるでしょう。

地域特性を活かした支援策が全国各地に広がり、日本全体の経済活性化につながる未来を期待したいですね。


一般社団法人日本エンジェル投資家協会では、エンジェル投資家向けの「エンジェル会員」、スタートアップを支援している自治体や企業・団体向けの「パートナー会員」を募集しています。
会費は無料です。ぜひ一緒にスタートアップの成長を支える活動をしませんか?

詳しくはこちら → https://j-angel.jp/